不動産の調査②

不動産物件の調査について、不動産の視点から解説してます。自分がお客様(買い手)の場合は、不動産の考えていることをここで学びましょう。

物件調査でまず最初にやるべきこととは?

例えば不動産業界に新人で入ったA君が、上司から「その物件、調査してきて」と言われたらどうでしょう?

新人A君としては「とりあえず物件の現地を視察してみようかな」と思うでしょう。しかし、すぐに現地に行ってみることが必ずしも重要であることではありません。

一般的に、不動産調査は下記にある6つの対象があるので確認してみましょう。

 

1.案件の当事者
案件の当事者とは【依頼者】【売主】【買主】【代理人】です。ここでの調査はほとんど当事者同士の会話(ヒアリング)になります。

2.物件現地
敷地内だけでなく、敷地外の状況も把握します。実際に現地を見てみて、交通環境・ライフラインなどがどんな感じなのか把握します。

3.地区の役場
市区町村の役所(役場)、場合によっては都道府県の役所にて調査を行います。ある程度はネットでも調査が可能です。主に法律関係の調査を行います。行政の調査は、調査方法によって結論が異なる場合があります。

4.地区の法務局
物件管轄の法務局出張所で調査します。権利関係の調査が主になりますが、不動産の対象範囲や担保価値も確認することができます。(今ではネットでも調査が可能です)

5.関係者
地主、借地人、マンションの管理人、税務署などです。調査する人の人柄や経験値によって回答が様々ですが非常に大事な調査になります。

6.ライフライン
上水道、下水道の状況など電気・ガスの各会社にて調査を行います。ちゃんと配管が届いているのか?、今でも十分に使えるか?など確認します。(ネットやFAX経由で確認する場合もあります)

買い手の立場としては、不動産がこのような調査を行っていることを頭に入れておきましょう。
 

調査には優先順位が大事

このような6つの確認場所をあたるには順番が大事になります。ここでは以下の順番をおすすめします。

①案件の当事者 → ②物件現地 → ③地区の法務局 → ④地区の役場 → ⑤ライフライン → ⑥関係者

まずは、①案件の当事者 と ②物件現地で調査方針を固めます。

①当事者 と ②物件現地はどちらも得られる情報量が多いです。ですので漏れのないよう予めチェックリストがあるといいでしょう。まずは売主に実際に会い、コミュニケーションを重ねながら「目に見えない事」を質問して引き出しましょう。

③地区の法務局では主に権利関係をチェックします。ここではチェックというか、当事者と話した内容に相違はないかという確認になります。

④地区の役場の調査は法務局で取得する登記簿謄本、地積測量図を使うケースがあります。ですので順番的には法務局のあとになります。

⑤ライフラインは役場調査の前でも後ろでも良いところですが、登記簿謄本の取得など役場のほうが重要度が上ですので、役場を先にします。

⑥関係各所は他の調査の結果を受けて、質問を準備することになるので一番最後となります。

このような流れがベターになるので、買い手にとっても上記の流れを把握しておくと交渉がスムーズになります。

 

1枚の住宅地図で省く調査と手順を決める

調査の際にはA4サイズ1枚の住宅地図を用意しましょう。ここでいう住宅地図とは居住者名と住所などが表示された地図です。そして「買い手の目的」と、「満足のいく取引にするにはどうしたらいいのか?」を考えながらその住宅地図と睨めっこします。

不動産としては地図を見ながら顧客・関係者の考えているところを頭で整理していくことが重要になります。

双方にとってメリットとなるような交渉・金額にもっていくにはどうすればいいのか?、考えることになります。

買い手としては後悔のないように、忌憚のない意見・質問を心がけましょう。

 

不動産の調査①

ここでは不動産の調査について、不動産業者の視点から解説しています。お客様の立場としては、「不動産がどのように考えているのか?」がイメージできると思いますので、物件の取引・交渉に役立つことができれば幸いです。

 

買い手が購入したい不動産物件の調査する

不動産としては、お客様が気になる物件があると連絡があり取引を進める場合、その物件を調査することから始まります。この場合、不動産はどこまで物件調査をするべきなのでしょうか?

実は、宅建業法には調査義務については何も明確な規定がないことが書かれているのです。つまり、口頭で説明をする義務はあるが、実際に調査をする義務はないのが現実です。

しかしだからと言って不動産は全く調査をしない、という訳ではありません。お客様に説明する以上、不動産のプロフェッショナルとして調査するのが当然と考えています。

 

誰でもわかることは調査しなければならない

このように不動産の調査には明確な決まりがないことで、一体どこからどこまで調査をしたらいいのか?、わかりづらくなっています。そのため不動産業者で調査の基準をつくる必要があるのです。

しかしながら、全くのゼロベースから調査基準をつくるのは大変ですし時間もかかります。そこで、どこからどこまで調査すれば、「宅建業者としての責任をしっかり果たしたのか?」「このあと問題になるようなことはないか?」という2つの点から基準をつくることになります。
宅建業法では、宅建業者の調査義務に関しては以下のように判断しています。

① 誰でも調べればわかることは調査しなければなりません。(消費者が見てもわかるようなことは、調査して説明しなければなりません)

② 高い専門性が必要なことまで調査する必要はありません。かつ責任も負いませんが注意を促すことは必要です。

③ お客様がそれを知らないと不利益になってしまうことは伝えなければ、後々責任が問われることになります。

④ 調べられる範囲内で調べていれば責任は生じません。

ケースバイケースで違う判断をされることもありますが、大きな流れとしては上記の考え方があります。不動産業者はこの判断をベースに、調査基準と範囲を決めていくことになります。

ですのでお客様の立場としては、「この物件についてどこまで調査してくれているか?」を注意深くみてみましょう。

 

わからないところは専門家に任すことも重要

上記の調査義務について気になるのは「高い専門性が必要なことまで調査する必要はありません」という箇所ではないでしょうか?高い専門性とは、例えば「地盤調査」や「地震に対する構造」などに必要な特別な知識や資格を指します。

しかし、これらについて全て無視していいか?、というとそうではありません。素人が見てもわかるような建物の傾きがある場合は、不動産としてお客様に「この物件は注意が必要ですよ」と伝える必要があります。

その上で「専門的なことは責任が取れないので、もしこの部分が気になるとお考えであれば、別途専門家をご紹介しますがいかがいたしましょうか?」と伝えることが重要です。

一般人からすれば、不動産のことなら何でも知っていると思われるのが不動産業者です。そのため、このように場合によっては、例えば土地家屋調査士など専門家への相談が必要となることも予め伝えておきくことが重要になります。

そうしないと後日、余計なトラブルを招くことにもなりかねませんので不動産としては注意しましょう。

自分がお客だった場合は、物件の傾きや耐震構造などについて詳しく聞いてみましょう。

 

買い手にとって不利益かどうか考える

買い手がその物件を今後どうするのか?、によって伝える内容も変わってきます。例えば、古い家を解体して新築を建てる予定であれば、古い家が倒れそうといった状態であっても問題ありません。

その場合は解体をして新築物件を建てるのですから、依頼者の不利益にはならず、不動産としては責任は問われないでしょう。一方、古民家をそのままの状態で住む場合は、建物の現況が大きなポイントになってきます。

このように買い手の目的によって調査範囲は変わっくるので、不動産としては臨機応変に相手の望んでいるところを汲み取ってあげましょう。

 

不動産屋は常にお客様のために最善を尽くそう

調べられる範囲内で調査しておけば責任は生じないというのも頭に入れておきましょう。特に不動産の場合は所有者しか知りえないことが多々あるため、考えだすとキリがなくなってきます。例えば、物件所有者が話をしてくれなかった事柄については、調査をするにもも限界があります。

そのような場合には、「所有者からの聞き取りで、ここまではわかりました」「所有者以外にも確認しましたが、問題はないようです」と依頼者に現状をそのまま伝えれば責任は生じないと考えてよいでしょう。逆にお客様としては常識の範囲内で沢山の質問をぶつけてみることをお勧めします。

不動産としては、「物件調査に最善を尽くしたか?この他にやれることはないか?」と、常に自問自答するように心がけることが大切で、お客様視点で行動することが重要です。

 

物件調査の定義付けが大事

このように不動産調査とは、その物件がどのようなものなのかを誰にでもわかるように説明することです。見ただけでわかる一部分では、所有などの権利関係や法律などまでは理解ができないからです。

そして、依頼者が不動産業者に求めているのは、不動産の「目に見えていない事」「気づいていない事」「見たとしても分からない事」という3つの”事”によって満足のいく取引ができなくなるという不利益にならないようにすることなのです。

ここまで紹介してきた判断基準をベースに、この3点に気をつけながら「何を調査すべきか?」の範囲を決めていきましょう。